2010年03月02日

刑事コロンボ 1話「殺人処方箋」

刑事コロンボ「殺人処方箋」
Prescription : Murder / 1968[1話]

私は刑事コロンボシリーズのビデオやDVDのを所有していません。この第1話「殺人処方箋」は2010年4月9日のBs Hiでの放送で初めて見ました。

オープニングのタイトルバックが凄い!


かつて舞台劇として演じられた作品を、TV用に再アレンジして制作されたパイロット版だということです。冒頭の番組名やキャストのクレジットのデザインにはびっくりしました。時代性を物語っていますね〜。それに比べ、3話「構想の死角」からはお馴染みの「右揃え・黄色のゴシック系書体(注)」という、刑事コロンボシリーズ独特のオープニングがが定着するようです。

ピーターフォークは当時41歳。その後のコロンボ警部のトレードマークになる、レインコートもヨレヨレとまでは言えず、髪型もボサボサではないです。それでも後期の作品(新・刑事コロンボを含め)よりも、しっかりしたキャラクター性を感じられました。しつこい捜査、細かい矛盾を逃さない着眼点、さらには犯人を罠にかける「落とし」のテクニック。


主犯と共犯の動機の温度差


その後のコロンボ作品にも数回採用されている「共犯モノ」、初回からそうだったのですね。共犯者の「口封じ」は各話とも重要なポイントになり、第二殺人の被害者になるケースも多いのですが、この「殺人処方箋」のコロンボは共犯者の弱さに目をつけ解決の切り札にしました。コロンボ警部の凄さは、「主犯」と「共犯」の「動機の温度差」を共犯者に示唆し、「主犯者に利用された」という背景を引き出していることです。

主犯のフレミングは共犯のジョアンに対し、ヘマしないように細心の注意を払っていますが、これは「二人の未来のための殺害計画」ではなく、実際に利を追求しているのはフレミングのみで、ジョアンは共犯者として選ばれただけだということを、見る側に伝えています。


普通の刑事ドラマではないですよ〜宣言


犯行後に、フレミングが電話の上に手袋を忘れそうで、忘れなかった演出。これは視聴者に「おっと、そんなに簡単にヒントは残しませんよ」と、語っています。また、コロンボ警部がジョアンを脅して落とそうとして「じゃ本部で供述をとりましょうね」の後、拒絶されるシーン。普通の刑事ドラマなら、これらが決め手になっちゃうところ「これくらいじゃ落ちませんよ」という、意気込みを感じました。

最初は強烈なほど「豪腕刑事」の素質があった


心が揺らぐ共犯者のジョアン・ハドソン(キャサリン・ジャスティス)に「あんたが殺したも同じだ」から「あんたを落としてあいつを逮捕する、これは約束します」の連続した台詞は、コロンボシリーズを通して最も強気で執拗な態度で、その後のエピソードではもう少しトーンを和らげる方針に落ち着いた気もします。



コロンボ警部の刑事哲学が見えてくる


また第1話で既に、コロンボ警部の「刑事哲学」とも思える言葉を聞くことができました。それは「いくら犯人が頭が良かったとしても、殺人については素人である。しかし自分にとってコロシは仕事。たいへんな修練を積んでいるわけです…。」というもの。た、確かに。コロンボ警部の捜査手法はそうした経験に裏付けされた、「匂いを感じて動く」のような部分が大きいのです。

ずっと後の作品40話「殺しの序曲」で、オリバー・ブラントに語る場面や、44話「攻撃命令」の言葉遊びも興味深いです。

注:2話「死者の身代金」は1話に比較し、かなりシリーズ化したものに近いデザインになっていますが、文字は白色で、エクステンデッド・ブラック(横長で極太)書体ではありません。

レイ・フレミングのマンションの風景は「絵」


古い時代のテレビドラマや映画の笑えるワンシーンですね。レイ・フレミングのマンションの風景は完璧に「絵」です。フレミングが妻を殺害した後、窓ガラスを割って強盗の仕業に見せかけるシーンで、風景に自分の影が映っています。その他にもアカプルコの釣りのシーンも、もちろん海(背景)とガッツリ合成していますよね。

ジョーン・ハドソン邸は「スタール邸」


ジョーン・ハドソン邸は、有名な「スタール邸」で自称「大部屋女優」のハドソンさんにしては、とてつもない豪邸です。「スタール邸」はこの他にも「構想の死角」ケン・フランクリン邸「アリバイのダイヤル」のエリック・ワーグナー邸としても登場します。こちらは身分相応でしょうか(笑)
→刑事コロンボマップ:スタール邸

監督:リチャード・アーヴィング
脚本:リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク
出演:ジーン・バリー、キャサリン・ジャスティス、ニナ・フォック etc.

加筆:2014年10月24日
 
posted by ぼろんこ at 00:07 | Comment(19) | 初期作品(1話〜9話)
この記事へのコメント
ぼろんこさんこんにちは。

一応、高校の時にNHK初放送でファンになった者です。

DVDとかで、最近も見てるんですが私は第1話の「殺人処方箋」が一番のお気に入りです。

「・・そう。かつらもないしね。」「上司は切れる人なんですよ」「死体置き場で撮ったものだけど見てくれるかな」から「アンタが殺したのもおんなじだ!」共犯者ジョアンを問い詰めるところ。次第に緊張感が高まり最高潮でジョアンがパニックを起こします。

コロンボが落ちたと思って肩を抱いたけど、ジョアンは睨みつける表情に変わり「いやよ。関係ないわ。私なんにも知らないといってるでしょ」

「ジョアンさん、今日は気丈なところを見せられましたが、これからが勝負だと腹くくることだ」

もう感涙モノの名セリフ名シーンの連続で、ああコロンボ(とその声優陣)を知ってて良かった、とつくづく思います。
Posted by marr at 2012年12月13日 15:35
メッセージありがとうございます。本当におっしゃる通りですね。コロンボのキャラクターが「ぼさぼさ頭」になる前ですので、余計にキレを感じますね。「殺人処方箋」に1票を追加してきます。
Posted by ぼろんこ at 2012年12月18日 20:45
「殺人処方箋」は何回も見ている話で大好きです。
女性(妻・愛人)を利用し、馬鹿にした男の末路、として最後の逆トリックは痛快でした。
NHKで最初に録音された吹き替えは見たことないのですが、我々がイメージしているコロンボのキャラ・雰囲気と全然違うそうですね。(だからこそ吹き替えし直したのでしょうが)そちらもすごく気になります。とにかくこれがきっかけで小池朝雄さんの他の出演作品を見るようになりました。
Posted by しおん at 2013年02月09日 16:35
しおんさん、コメントありがとうございます。
NHKの吹き替え版というのは、ジーン・バリーの声を俳優:瑳川哲朗さんが担当したものですね。瑳川さんは、時代劇「大江戸捜査網」で井坂十蔵役の方です。大ファンでした。
Posted by ぼろんこ at 2013年02月11日 22:50
1962年生まれです。
コロンボシリーズ 最初から見なおしています。
コロンボのくすっと笑わせる しぐさが好きです。
Posted by 谷口潤 at 2013年08月29日 06:15
谷口さん書き込みありがとうございます。私は1963年生まれです。同世代ですね。私は、ここ数年であまりに見過ぎてしまい、2013年から、なるべく見ないようにしています(笑)少し時間をあけて、また見ようと思います。
Posted by ぼろんこ at 2013年09月04日 10:43
先週、この作品のノーカット版がNHKのBSで放送されました。

フレミングの吹き替えは、若山弦蔵さんでした。
瑳川さんによる吹き替えは、現在ではブルーレイ版に十数分しか収録されていないそうです。

「カミさん」についてフレミングに語るシーンは、小池さんではなく、銀河万丈さんになっています。

銀河さんの声は太く、重厚感があるので僕は好きです。
Posted by るてなんと at 2013年10月09日 22:35
おばんです。
この初回作品はコロンボのキャラクター設定が確立してないと何かで読んでいたので、イメージが壊れるのがイヤで見ていませんでした。
先日のNHKの放送で初めて見て、ぼろんこさんおっしゃる通り、後期作品などよりよほどコロンボらしく、とても面白かったです。
髪型やコートも「まだ血の気が多い、ちょっと若いころのコロンボ」という気がして、決して悪くないと思いました。
やはり大事なところはあの刑事哲学的なとこですね。
Posted by yas at 2013年10月09日 23:29
るてなんとさん>コメントありがとうございます〜。若山弦蔵さんでしたか。録画してあるので後日確認します。

yasさん>「コロンボのキャラクター設定が確立してない」のですが「芯がある」作品だと思います。フレミングとコロンボの会話がとても興味深いですよね〜。
Posted by ぼろんこ at 2013年10月15日 17:35
ぼろんこさん、はじめまして。
kaoriと申します。
私も小学生の頃にNHKで観たのが初めてなので、ぼろんこさんと同世代かもしれません。

まだ数回分しか拝見していませんが、ぼろんこさんのレビューが、とても丁寧で続きを読むのが楽しみです♪


フレミングとの会話での「年間、100回は殺人を経験している」という台詞に驚きました。
ロス市警管轄だけで年間100件!
それに「これは大変な修練」という台詞には、コロンボの自信が感じられて、コロンボがとても頼もしく思えました。

ハドソンの登場シーンで、自分を「家賃が高くつく女だ」みたいに言ってたような気がしたので、あの豪邸の家賃は、フレミングが払ってたのかな???

これからも、よろしくお願いします。
Posted by kaori at 2013年12月23日 00:59
kaoriさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
「これは大変な修練」が出てくるシーンは、僕も大好きです。犯人がエリート(セレブ)であるという、テーマに沿った絶妙の会話ですね。犯人はとても頭が良いという前提なわけですが、コロンボ警部は、それでも自分はこの殺人という分野のプロフェッショナル。犯人(あなたは)素人…だ。とイワンばかりです。深いですね〜。

「豪邸の家賃はハドソンには払えない」と思われますね。ロサンゼルスでも、有数の豪邸ですよね〜あれは(笑)
Posted by ぼろんこ at 2013年12月24日 19:08
犯人(あなたは)素人…だ。と言わんばかりです。深いですね〜。(の誤りでした〜)
Posted by ぼろんこ at 2013年12月24日 19:09
ブルーレイ版には、旧録音版の「殺人処方箋」の台本が収められています。

以下は、瑳川哲朗さんがフレミング医師を吹き替えた旧録音版での、「コロンボがジョーンに厳しく言い放つシーン」のセリフです。

「ハドソンさん、断っとくが今日のは、ほんの序の口だよ。君が精神的に参って、一切を告白するまでは絶対に諦めないから、覚悟しておくんだな。博士が君を相棒にしたのは大失敗だった。君は、本当は気の弱い女だ。今日の頑張りには私もいささか驚いた。だがまだ明日がある。そしてあさってもその次も、その次の日もその次も、私はどこまでも君に食い下がっていくぞ! 君は来る日も来る日も質問攻めにあい、どこへ行くにも尾行され、獣みたいに狙われるんだ。博士が助けてくれると思ったら、大間違いだぞ。一人で戦うんだ。私は、必ず君に自白させて見せる。誓ってもいい。」

この前の旧録音版のセリフは、「お前さえいなきゃ、夫人はまだ生きていた、お前のせいでフレミングも(夫人を)殺す気になったんだ!畜生でもこんなひどいことは・・・!」というものでした。「あんたが殺したも同じだ!」という新録音版よりさらに過激な口調での攻め方だったのです。

これを完全な形で観てみたかった気がします。

刑事コロンボのブルーレイでは、幻とされた「策謀の結末」の小池版、「黒のエチュード」の旧録音版など、現存するすべての吹き替え版がありますが、これだけは、最後まで見つからなかったのです。

吹き替え版を完全収録というのは、今となってはもはや「叶わぬ幻想」となってしまったのかもしれません。
Posted by るてなんと at 2014年04月08日 22:22
おぉ、るてなんとさん「ハドソンさん、断っとくが…」の記述、ありがとうございます。かなり強烈な台詞ですよね。すごい念押しです(笑)テレビドラマでは、トーンを和らげたのでしょうね〜。

本来警察ってのは、これくらい厳しい気もします。でもコロンボシリーズとしては、この先は、もう少しソフト路線を歩むことになり、独特のテイストを醸しているのですね〜。

ご存知の通り、たまには激怒しますが(笑)
Posted by ぼろんこ at 2014年04月18日 19:36
精神分析医であるフレミングがハドソンを妻に変装させ“人間の思い込み”を利用して完全犯罪を企み、水着の女性警官をハドソンだと“思い込んで”足もとをすくわれる。

犯人の仕掛けたトリックとコロンボの逆トリックが犯人の職業に収斂される。

50年近くも前の作品なのに色褪せぬミステリーの質。
素晴らしい第1話だと思います。
Posted by エース at 2014年05月23日 04:21
エースさんコメントありがとうございます。

フレミングは…ハドソンを妻に…。
コロンボは…女性警官をハドソンに…。
相手の作戦を逆利用して、解決する。
スカっとするエンディング。

衝撃的デビュー作(笑)
Posted by ぼろんこ at 2014年05月23日 10:06
初めてコメントさせて頂きます。コロンボ見る度、こちらのサイトを参考にさせて頂いてます。詳しい解説、すごく助かります。ありがとうございます!

親戚(確か、妹のだんなの家?)のテーブルを、原語では、kidney tableと言っていますが、「そらまめ」型のテーブルと日本語では言っていますね、日本人には馴染みない表現を分かりやすく翻訳して下さる翻訳者の力量に感心することしきりです。

なるほど、医者自身が、最後のトリックに引っ掛かってしまったというオチですね。
自分でジョーンに諭したにも関わらず。

トリックを犯人の職業を絡めるあたり、いつも見事ですよね。

まだ数作しか見ていませんが、皆さまのコメント楽しみです。

Posted by sora at 2014年05月23日 23:15
soraさんコメントありがとうございます。翻訳のお話など、とても興味深く拝読いたしました〜。ありがとうございます〜。刑事コロンボファンの方々と、こうして会話が出来ることがとても楽しいですね〜。
Posted by ぼろんこ at 2014年05月26日 11:11

いや〜OPとEDがカッコイイ!!(´ー`*)

序盤、007の様な始まり方でオオー!と思いましたが、ジーン・バリーって007やってました??
風格といい、声といい以前テレビで見たような・・

そして、笑えたのが病院でのアナウンスです(笑)
レイが妻を殺めようとしますが、まだ意識があったのでコロンボと一緒に病院に向かいます。
そこで、受付を通して知り合いを呼びますが、
その中のアナウンスで、
「ランズベリー先生〜受付まで電話下さい」というのがありました。
ラズベリを文字ったのでしょうか?笑笑

1度目は気づかなかったけど、今回2度目に見て
あれ〜?と思い、笑ってしまいました。

そして、受付前でコロンボと話している時に、全身黄色の服を着ているアジア系の女性がいます。
椅子に座ってましたが、途中で電話をかけているのですが、なかなかの魅惑ブリです(ლ ^ิ౪^ิ)ლ

そして、68分くらいの会話で
「信じれない程の厚かましさ」
「油断も隙もない、ずる賢い妖精の様なもの」
厚かましさは分かりますが、妖精?!笑 
聞き間違いですかね ((;゚;Д;゚;))

ラストのシーンですが、死体の確認をすればよかったですね・・汗
僕にしては珍しく、犯人に感情移入してしまいました^^;
きっとコロンボが、でっち上げ&少々キツい感じだったからでしょうが。。

最後、コロンボのトリックを見破っていたら、コロンボの責任になるのでしょうか?
そして、どうやってジョアンを誑し込めたのか?

ここが謎でしたが、THE ENDの幕と同時に、ジーン・バリーが背景を背に、タバコを吹かすシーン・・カッコイイ!!
ああいうオジサンになりたいです(笑)


P.S レイ夫婦のマンション、背景が絵だったのですか!!いま、気づきました(笑)
Posted by とっしーー at 2014年08月12日 00:21
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筆者ぼろんこが1970年代にNHKの総合テレビで刑事コロンボに出会った頃は小学生でした。それから30数年後の2009年にNHK BSで再会した時、その素晴らしさにあらためて感銘し、自分なりの解釈をブログに書きためるようになったのでした。